考えてみれば、この人も何かを持っているかもしれない・・・
小学校のときから知っている同級生Oくんが、同じ地区にいる。
当時は少し気は短いかもしれないけれど普通の男の子だと思っていた。
現在、製材所をしていて、結婚もし、子どもも二人。
私が朝食の仕事をしているところへ、そのOくんが原付バイクで通りかかった。
今年は自治会の役員の一人になっているらしく、今日は、河原の草刈りの係に当たっているようで、私が仕事しているそばで作業をするのだ。
・・・。
ガラス越しに(もうすでに暑くて、エアコンをつけていた)
私 「よぅ。」
と、片手をあげて愛想をしてみる。久しぶりに顔見たし。
すると、そばにお客さんがいるのに、
O君「今日の泊まりは誰?」と聞いてくるではないか。
私 「兵庫県の人だけど?」
O君「いや、ちがう。」
私「ああ・・宿直係さん?役場職員の若い子。ボランティアでやってくれてて・・」
O君「ふうん。」
返事してやったのに、興味がないらしく?原付バイクの向きを変えて、そのまま作業場所に戻っていった。
それからしばらくして、朝食が終わり片付けをしていて、お客さんもチェックアウトの用意をしているときに、またO君が来た。
お客さんが「あの人、また来たよ。」と教えてくれた。
私「どうしたの?」
O「草刈り終わった。」
私「お疲れさん。」
O「冷蔵庫の中に、ビールないの?」
私「え・・?」
O「ホストが置いていったやつ、あるやろ?」
私「・・・。」
・・・私は、冷蔵庫の中にビールが入っていることを知ってる。
ゲストさんが残していったものや、ホストグループの宴会の残りとか、差し入れとかもある。
彼も、知っているのだな。
ここで、自分の知り合いの後輩たちが時々宴会をしていることを。
ほぼいつも、何らかのアルコールや飲み物が冷蔵庫に残っていると言う事を。
・・もしかしたら、今までも知り合いのホストにビールやお酒をもらったのか。
でも、理不尽だと思った。
私は、ジェスチャーとしてとりあえず冷蔵庫を確認してみて、あるのを見ながら「ない」とウソつくのも嫌だし、思った通りの「あるけど、あなたにあげる気はないわ。」と言うのも、言葉を発する元気がなくなってしまって、O君のほうを見ずに片付けに戻った。
・・・いつのまにか、O君はいなくなっていた。
彼は、昔から酒豪だとは聞いてたけど、
さっきのセリフは、おかしい・・と思った。
お客さんの存在を、まるで認識していなかったようにも見えた。
この家は単なるゲストハウスではなくて、木材の振興やPRが目的でもあって、製材所や山守さん建材屋さん木工所、工務店など、地域の材に関わる有志達が、自分の仕事をそれぞれ持ちながらも、運営に協力し合って成り立っている。
私だって、近所の料理好きなおばちゃんとして協力しているけど、本来は「自動車修理工場のおかん」であり、主婦でもあるから、仕事に出るのは大変なのだ。報酬だけが目的なのではない。自分がしんどい時でも、続けていかねばと思ってる。
少子高齢化が進む地元を、若い子達がなんとか立て直そうとしているのを助けたいし、ゲストさんに「ここはいいところだ」って思ってもらいたい気持ちもある。
冷蔵庫に残っているビールは、
宿直係になったホスト君が、ゲストさんと交流するときに飲むモノだ。
また、大掃除をしたあとのどが渇いた時に、休憩の時に飲んでもいいモノだ。
この家に興味を持っている人が、オープンハウスの時たまたま来たとしたら、一緒に飲んでもいい・・。
・・そう。誰が飲んでもいいものだけれども、
それは、この家を愛している人でないとダメだと思う。
彼は、あの家が建つことに、興味はなかったんだろうと思う。
それはいいの、人それぞれいろんな考え方があるし、杉の家が木材振興に役立つかどうかなんて誰にも分かんないし。協力するしないも勝手だ。
でも、協力しないなら、口は出しちゃいけないし、利益も求めないでもらいたい。
あなたには関係ない事だから。
そこんとこを、なにか、根本的に分かってない・・。
・・自分本位。
空気を読まない。
人の気持ちを理解しようとしない。
気難しくて、上から目線でモノを言う。(そう見える)
彼は、若い頃、剣道をしていて、強かった。大学でも何か入賞してたはず。
ストイックで、自分に厳しくてムキムキだった。
後輩にも厳しかったらしい。
今日、私は、、、、
「理論や理屈を理解することは出来ても、決定的に協調性・共感性が乏しい。」
彼は、そういう特徴を持っているんじゃないのかな・・と思った。
・・多分、悪意はない。
まじめで、勉強の成績も悪くなかった。運動神経もよかった。
子どもの頃は、何かをするにも協力し合えてた。
おもしろいことがあれば、笑えてた。
自治会の役員の一人として、やるべきことをしてる・・草刈にも来てる。
彼は、
これからも、少し気難しい「普通のおっさん」として生きていくんだろうと思う。
私のことを、同級生と思って、声をかけて来るのかな・・。
これからもっと孤独になっていくかもしれない彼を、直視したくないな。
・・・そんな風に思う。